パタンナー キャリア 悩み

現役パタンナーの仕事

華やかなファッション業界にありながら、ステージの上で、スポットライトもほとんど浴びることもなく、しかし憧れのこの仕事を天職として誇りに思い黙々と頑張っている「縁の下のカ持ち」がパタンナーのような気がします。

 

パタンナー人の顔がみな違うように、そのパーソナリティーや考え方もそれぞれに違いがありますが、ただ1つの共通点は服を作ることへの情熱のような気がします。毎日の人と人との関わりの中で、パタンナーだけがかみしめている喜びや苦しみとは一体なんなのか?
5人の現役のパタンナーの方から仕事の内容やその肉声を聞く機会をいただきました。

 

明子さん( 38歳) パタンナー歴16年で、現在ブランドチーフ。結婚1 2年で子ども2人の母。こ主人はアハレルメーカー勤務。
瞳さん( 28歳) ハタンナー歴6年
千晶さん( 27歳)ハタンナー歴6年
秀美さん( 25歳)バタンナー歴4年
健二さん( 26歳)デザイナー兼パタンナー歴3年半で、現在D Cブランドのアシスタントデザイナー

 

本日お集まりのみなさんは、アパレル企業のパタンナーとして、それぞれ別々の会社で活曜中です。ご自分の仕事の中で日頃考えていることや、パタンナーの喜び、悩みといったことをお聞かせください。
みなさん、好きで人った道ですから、後悔はないと思うのですが、いちばんキャリアの長い明子さんから自己紹介を兼ねてお同いしましようか。

 

明子 
長いといいましても、途中で産休や育児などでのプランクがありますが。長く続けてこられたのは、主人が別の会社でアパレルの営業をやっており、多少はパタンナーという職業に理解があったからかなと思います。

 

明子さんは、プランドのチーフパタンナーですね。スタッフはどのくらい抱えているんですか?

 

明子 以前は18人でしたが、現在は私を含めて13人のパタンナーがおります。

 

それは大変ですね。お子さんは何人でしたっけ?

 

明子
6歳と4歳の2人です。同居の母に面倒かけておりますので、そろそろ仕事を辞めて家庭に入る潮時かなと考えておりまして。それで、今日は出席をご辞退申し上げたのですが。。。

 

そんな状況の中ご出席いただいてありがとうございます。あとからまた貴重なお話をうかがわせてください。
瞳さんは、異業種からの再出発でパタンナーを志ざされたそうですが、どんなきっかけだったのですか?

 


短大卒業後1年間O Lをやっていました。でも、毎日が同じことの繰り返しで、つまらなくなってしまったんです。

 

それで、もう一度デザインスクールに入り直されたんですね?

 


ええ。それで、やってみたらこちらも同じことの繰り返しでした(笑

 

で、ようやくパタンナー歴6年生。まだまだ駆け出しです。

 

それはご謙遜ですね。
次に、そこでさっきからニコニコしていらっしやる千晶さん、自己紹介を兼ねてどうですか?

 

千晶
今はS社に勤めていますが、その前はカットソーの会社で、もうひとつ前は・・・。

 

といいますと、キャリア6年で会社は3つ目?

 

千晶
はい、バツ2です(笑 でも、それぞれに訳ありでして・・・。

 

そのあたりの事情をじっくりとうかがいたいですね。で、今の会社はどうですか?

 

千晶
ええ、1年目の新人です(笑い)。ちょうど1年前に結婚を機に退社して今の会社に移りました。

 

社内結婚で辞めざるを得なかった、とか?

 

千晶
いいえ、残業が多くてすつごく大変だったんです。で、ダイエットもしていないのにどんどん痩せてしまったので、周囲のみんなが心配してくれて。洋裁学校まったので、周囲のみんなが心配してくれて。洋裁学校社は、ほほ。定時に帰れるので、とってもラクです。

 

だから今は、少しポッテリとなった?あ、幸せ太りかな。
えーと、秀美さんは25歳でしたね。この中ではいちばんキャリアが浅いというか、若手ですが。

 

秀美
そうみたいですね。R社に入って3年目になります。その前にマンションメーカーのカジュアルを少しカジって・・

 

ハハハ・・・。そうすると、カジったのを含めると・・・そろそろ4年半です、はは。

 

デサイナーがバタンナーだった時代もあります

 

なかなか個性豊かな方ばかりのようです。このへんで、男性代表の健二君どうでしようか?
現在、デザイナーとパタンナーを兼ねているということですが。

 

健二
はい、そうなんです。ぼくはD CプランドのF社で働いていましてh先生のアシスタントデザイナーをやらせてもらっています。
デザインとパターンでは、どちらが主になりますか?

 

健二
えーとですね。気持ち的にはデザインが80パーセント位だと思うんですよね。ところが、H先生から「お前はパターンが分かっていないから、もう・度そっちからやり直せ」って言われまして・

 

すると、今はパターンが中心ということですか?

 

私の若い頃は、みなデザイナーとしてアパレルに就職して、デザインとパターンの両方やっていましたよ。一同、「へえー!」と感心する)

 

明子
そういう話、聞いたことがあります。私の頃はすでに分業化していましたけど。

 

私の若い頃というのはね原宿界隈に若者がタムロしはじめる頃で、「石を投げたらデザイナーに当たる」なんていわれるくらい、自称デザイナーであふれていました。しかし自ずと得意分野に分かれてはいましたね。ただ、その頃はまだ「パタンナー」なんていう和製英語もなくて、正確にバターンメーカーとかカッターと呼んでいました。今のE男君とちょうど同じ年頃でしたからね、懐かしいですね。

 

秀美
じゃ、健二さんは本当はどうなりたいのかしら?

 

みなお互いが分かってきたようだから、どんどん自分の考えや質問を出し合って話を進めましよう。

 

健二
専門学校のときからH先生の作品が好きで、アルバイトでお手伝いして、卒業後は就職もさせてもらったんです。ちょうど3年半位になりますが、やつばりコレクションの仕事は楽しい!デザインで自己主張できますからね。

 

ただ、デザイナーの素質は認めてもらえてるみたいですが、仮縫やパターンの指図が下手なことからトラブルがあったりして、会社を辞めようと思ったことも何回かありました。

 

秀美
じゃ、今は落ち着いて、両方ともがんばっているわけね?

 

健二
ま、そうですね。実は、今日の司会者の満先生のプロセミナーに会社から私1人だけ出させてもらって、この半年間、製図と立体裁断の勉強中です。とくにドレーヒ。ングで、満先生のマジックハンドはスッゴイ!私もあんなになりたいです。

 

デザイナーのH先生も、「最近、君もパターンが分かってきたから、相乗効果でデザインもよくなった」といわれました。そんなわけで、今はとくにドレーピングが面白いです。

 

それはよかった。しかしドレーピングはね、いつも言っている通り製図の力が基礎になければ伸びない。じゃ、これからはデザイナーよりもパタンナーを目指してみたい?

 

健二
はい。あ、いいえ!

 

健二
将来は、自分のコレクションを作ってみたいんです。だから、ほ。くは「両方」です!

 

達成感を自分のものにできるのがパタンナーの仕事の魅力

 

ところで、アパレル業界のデザイナーの仕事内容は、業界以外の人にも割合に知られていますが、パタンナーについては、ほとんど知られていないように思います。デザイナー人口の何倍も多いのにね。
パタンナーの道を志す人の道しるべとなる意味でも、専門職の重要性とプライドを、この際、声を大にして訴えてみたらどうでしよう。はい、瞳さん、どうぞ。

 


私は、今がいちばん充実していると思っています。キャリア6年といえば会社の中堅クラスで、他のプランドでもこのクラスの人たちの実力が会社を支えていると思うのですね。それでいて、また、いちばん迷いを感じる頃だとも思うのです。結婚も考えるし、仕事の責任も重くのしかかってきます。

 

私自身は大げさにいえば、一大決心して入った道ですが、仕事はとってもハードで、決して華やかなものではありません。けれども、パターンは理論的に構築されるものですから必ず解答の得られる仕事で、達成感を自分
のものにできます。これは、職業から人生を考えると、とても大事なことだと思うのです。ですから、技術的な向上に向けてもっと努力したいと思っています。やればやるほど、パタンナーとは奥の深い仕事だと実感しています。

 

明子
同感です。

 

瞳さんはとても真面目な方だとお見受けするのですか、会社内での人間関係に悩むことはありませんか?私の経験では、それがいちばん難しいと思うのですが。

 


そうですね、おっしやる通りだと思います。私のプランドでは、パタンナー同士はみんな仲がいいですね。仕事の進め方でデザイナーとは少し反りが合わないのですが、人間的にはよい人なので、他のパタンナーも同様に気にしていません。

 

人によってなのですが、ドレーピングチェックで立体のトワルをいじくり回してグシャグシャのまま、あと頼むわーって。あれがいちばん困りますね。

 

秀美
そうそう。

 

それとですね、会社のボディーと体型や身長が違うのに、自分で試着すると必ずといっていいくらい「自分のここを出せ」とか「シェープが強い」とかバランスを直させるわけ。その結果で変なデザインになったのに、営業担当がミーティングでいうんですよ。「うちのパタンナー、センスないよな」とか。でも、その原因を作った本人は知らんふり。どう、これって?

 

なんだか、私が叱られているようで・・・(笑い)。まあ、そのたぐいのことはよく耳にします。感性が売り物の仕事柄、自己主張はみな強いですね。パタンナーでも同じでしよう。

 

秀美
ところで質閊があるのですが、サンプルミーテイングのときに、ボディーと人間(モデル)とのどちらを優先させたらよいのですか?

 

プランドコンセプトに合わせたボディーを使っているのでしよう?

 

秀美
はい、そうです。

 

だったら話は早いんです。どちらが優先ということはありませんね。必ず人に着せて機能性を判断します。そのために、プランドの体型で中心サイズに近いフィッティングモデルを社内で決めておきます。
シルエットやダーツ量、身幅などはシルエット原型製作時に検討されていて間題なければ、着る人に合わせてむやみに直さないことです。パターンに関する検討と素材に起因する修正点のチェックは、ボディーに着せて行います。

 

明子
私のところでも、社内のフィッティング・モデルに着てもらうのですが、つれジワが出たりアームホールがきっそうだなと思ったら、必ず体重が変化していますね。
ですから、時々は社内で寸法の変化を計測しています。自己申告はあてにならないですからね。

 

型紙の評価もしてほしい

 

千晶さんは、訳ありで3つ目の会社でしたね?転職経験がこの中でいちばん豊富(失礼! )なのでお聞きしますが、どこの会社にも共通していると感じる部分がありますか?

 

千晶
あります、あります。ます、パタンナーって、なんでもさせられますよね。ポケットの底がほっれて小銭が落ちるから縫ってくれとか、宅急便出しとけとか。まあ、それはいいのですけど。でも、パタンナーが毎晩9時10時まで仕事してても彼らは声ひとつかけるでもなく、煙のようにスーツと消えて早々と帰ってしまう。女性の服を作って売る会社の男性が、なぜこうも女性に無神経でいられるのだろうかと
思います。

 

明子
そうなのよねー。私もそれは同感です。でも、みながそうというわけでもない会社もあって、人によりけりじゃないかしら。

 

秀美
ひょっとしたら、明子先輩は社内恋愛ですか?

 

明子
(上目づかいにコックリして)

 

秀美
あ、やつばり!プライベートなこと聞いちゃってごめんなさい。

 

健二君は女性パワーに圧倒されたのか静かですが、何かいいたいことはありませんか?

 

健二
そうですね、僕はデザインとパターンと両方やらせてもらってみて、本当に自分の実力のなさを痛感しています。人が何と思おうと、今のところは自分のことでいつばいなんです。5年先10年先の自分の姿が見えない不安があります。

 


それはみなさん同じでしよう。健二さんは、すでにちゃんとした将来の夢をおもちだし、そのうえ、よいお手本となるH先生についていらっしやるのですから、不安がる必要なんかないと思う。それこそ、何もできないくせに自信過剰なんていうのよりいいわよ。

 

健二
ありがとうございまーす一

 

パターンメーキングの作業に関して改革しなければならない点がありましたら、話してください。。

 

明子
デサイン画が決まったら、バターンはパタンナーに任せてほしいですね。そのかわり、事前の説明はデザイン画とともにきっちりと伝える。そうしないと、愛着が湧かないから創意工夫もしないし、ただの線引き屋みたいになってしまいます。

 


よい作品ができたら、型紙の評価もちゃんとしてほしいのね。パタンナーもそれなりにねぎらってもらいたいのです。別にデザイナーよりも目立ちたいと思っているわけではないのですが。

 

秀美
そういえば、「いいパターンができたねえ」って話は聞いたことないですもんね。「ええデザインやな」とはいっても。

 

千晶
バターンメーキングの難しさって、理解されにくいのよね。だからわたしたちは、サンプルができたとき、パタンナー同・上で合評会をやって、向上を目指したり、褒め合ったりしてます。(笑い)

 

よい服には必ず「よい型紙」がある

 

時間も残り少なくなってきましたので、最後に、みなさんと同じパタンナーを志す若い人たちのためにひと言ずついただけますか?ではまず、健二君から。

 

健二
ばくも初めは目立ちたいとか、おしゃれが好きだとかでデザインスクールに人ったのだけど、仕事になったらそんなものだけじゃ駄目で、働く厳しさを知りました。でも、ほ。くみたいに自分の目標や見習うべき大先輩をもてるのは、本当に幸せだと思います。

 

千晶
バタンナーの仕事って、外から想像するほどきれい事ばかりじゃありません。実際に就職した人の話を聞いて、現実を把握することが大切ですね。インターンシップもありますしね。それともうひとつ、意外とパタ
ンナーって肉体労働だと思いません?何でもそうでしようけど、この仕事も健康が第I条件よね。

 

秀美
私は最初の会社にいたとき、先輩のドで、パターンの青焼き(コピー)、材料の準備、加工出しなどばかりであんまりパターンを作ることがなかったのです。それで次の会社にはパタンナーとして移ったんだけど、初めのうちは全然パターンが分からなくてすごく苦労しました。だから、何事も最初が肝心という気がします。でも、そのかわりに、工場に通ったおかげで縫製の知識が残りましたから無駄ではなかったと思っています。

 

千晶
洋服作るのって楽しいわ。それに、何かにチャレンジするのも人生でしよ。若いうちは軌道修正も可能だし・物学生のみなさんにいいたいの。学校で習ったことは会社に人ってからもいちばん大切な基礎になること
ばかりなので、ちゃんと勉強して、私たちの会社にも来てほしいわ。

 

明子
私の場合は、チーフになって育てた後輩パタンナーの中でもよくできるパタンナーが、度重なるリストラで抜けてしまったため、いつも新顔ばかりで気が抜けないんです。責任は、私にも会社にもあるのですが・・・。じっくり教えたくても教えられず、ですから、せめて経験年数相応の技術を身につけていてほしいですね。
お給料をもらうということはプロだということなので、そういう意識をもって、自分自身をいい人材に育ててもらいたい。
司会厳しいお話ばかりでしたが、その通りだと思います。パタンナーの働く環境も、地位も、ただ単に「縁の下のカ持ち」で終わらせてはならないと思います。

 

パターンメーキングもコンピューターの導入でハイテクの時代になっています。しかし、それを動かし表現(感性)するセンシビリティは唯一人間にだけワえられたもの。時代が変わっても、よい服の「よい型紙」は変わりません。パタンナーの論理的な思考と卓絶した技術が生み出す人間の英知なんだと思います。